小さな命 そっと抱いて ~大阪の女子少年院~

「西の京みもと動物医院」で開業されながら、保護司でもある三本隆行先生をはじめ、奈良県獣医師会の獣医師有志が、長年、行っておられる活動が、朝日新聞に記事として掲載されました。

全国9カ所にある女子少年院の一つ、交野女子学院(大阪府交野市)が、動物とのふれあいを通して生命について考える教育に取り組んでいる。生徒たちは、獣医師の話に熱心に耳を傾け、小さな命の重みを感じ取っていた。

動物とふれ合い学ぶ重み

3月23日の午後、交野女学院の体育館に64人の生徒が集まった。そろいのジャージーにお下げ髪。8人の獣医師がチワワやマルチーズ、モルモットなどを連れて現れると、生徒たちに笑顔が広がった。
 生徒たちは8班に分かれ、獣医師を囲みながら授業を受けた。モルモットにおそるおそる手を伸ばし、抱き寄せる。別の班の生徒は、使い慣れていない聴診器で猫の心臓音を聞き、驚きの声をあげた。聴診器を自分の胸に当てた生徒は「聞こえへん」。周りは「うそやん」。その屈託の無い表情は、街中で見かける同じ世代の少女たちと変わらない。
 30分ほどの班活動が終わると、全員で整列。奈良県在住の獣医師で保護司でもある帝塚山大非常勤講師の三本隆行さんが、ある問いを投げかけた。
 「僕らは何十万円の血統書付きでも捨て猫でも、その命に危険があれば助けます。だけど死なせてくださいと頼まれることもあります」
 この日の授業のテーマは「安楽死」。実際の事例を挙げながら、三本さんは話を続けた。

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「たとえば大型犬の飼い主が高齢になり、面倒を見られなくなったとき。脳腫瘍でけいれんを起こすようになったとき。泣き声がうるさくて近所から文句を言われたり引っ越したりするとき。みんなが獣医師だったらどうするか、考えてほしい」。体育館は今までのにぎやかな雰囲気から一転、静まりかえった。  生徒たちの視線は、おのずと目の前にいる小さな命に注がれる。「この動物たちは簡単に殺されてしまう弱い存在。そして僕らも弱い。誘惑に負けるし一人では解決できないからこそ、だれかに支えられている。みんなもそのことを忘れず、大切な家族や動物と二度と離ればなれにならないようにしてほしい」。三本さんの言葉が体育館に響いた。  初めは緊張し、ぎこちなかった生徒たち。少しずつリラックスし、変わっていく様子が表情から見てとれた。  そして最後のあいさつ。「捨て猫を拾って飼っていたけれど、そのネコはもう私のことを忘れていると思う。でも社会に帰ったら最後まで面倒を見る。今回、自分の無責任さがよくわかった」。ある生徒はこう語りながら涙ぐんだ。三本さんは言う。「命の重みを感じ、最後に話した言葉に伝えたかったことが全て集約されている」

思い 身近な人たちへも

少年院は現在、全国に52(女子、分院含む)ある。近年、静かに自分を見つめ直す「内観」△いろいろな状況をロールプレイングする「SST」(社会的スキル訓練)△「自分」と「相手」の立場で手紙をやりとりする「役割交換書簡法」などの導入が広がっている。
 交野女子学院もこうした流れに沿って10年ほど前、「生命尊重教育」を始めた。窃盗や傷害、強盗などの罪を犯して入る生徒たちの「共感性」を育み、命の大切さを感じ取ってもらうのがねらい。単に動物にふれるだけでなく、命と向き合うことで離れているペットや家族、大切な人たちの存在を考える踏み込んだ内容になっている。広い敷地を活用してキュウリやナス、スイカなどを生徒たちが育て、土に触れて収穫の喜びを感じる取り組みにも積極的だ。
 「授業の前と後で生徒たちの受け止め方が違う。少年院の取り組みは時間とエネルギーがかかり、結果も数字で表れるわけではないが、授業を重ねるうちに生徒の変化を見ると意味のあることだと感じる。今後もぜひ続けていきたい」と高村賀永子・主席専門官は話している。


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■西の京みもと動物医院(奈良市六条西4丁目1-32 TEL:0742-47-5333) (奈良県獣医師会 開業部会 所属)